2012年10月29日

敷地境界10本/Lはあますぎる−大気汚染防止法の改正論議

 10月24日(水)10:00から環境省会議室で、中央環境審議会大気環境部会の第6回目石綿飛散防止専門検討会が開催された。TOSHCから外山尚紀が委員に入り議論に加わっている。

20121024石綿飛散防止検討会.jpg

 今回、事務局の環境省から「中間報告骨子(構成案)」が示された。現時点(10/29)では環境省のホームページに当日配布された資料はアップされていない。
 この「中間報告骨子(構成案)」の項目立ては次のようになっている。

 T 検討の経緯
 U 総論
   1.石綿のリスクへの啓発普及
   2.所有者責任の明確化
 V 解体工事における石綿の飛散防止対策の強化
   1.事前調査の義務付け
   2.大気濃度測定の義務付け
   3.大気濃度測定にかかる評価基準及び測定方法
   4.立入権限の強化
   5.特定建築材料意外の石綿含有建材を除去するにあたっての石綿飛散防止対策
   6.その他

 検討会の議論で重要なポイントはいくつかある。
 第1は「所有者責任の明確化」だ。なぜか「中間報告骨子」の本文には「所有者責任の明確化」ではなく「注文者責任の明確化」と記載されていた。
 建築物の所有者といっても高層ビルを所有する企業もあれば、戸建て住宅の個人もいる。委員の中からは所有者にそこまで責任を負わせられるのかといった意見も出された。
 しかしたとえ建築物の種類、用途、規模にかかわらず、そこに含まれているアスベスト(石綿)の適正処理の責任を所有者に負わせることで応分の処理費用を負担させることができるのではないか。

 第2は、事前調査の義務付けだ。これについては大防法にないレベル3まで含める必要がある。また当然調査は発注者や施工業者と分離させ、登録又は認証制度のもとで専門の調査者が行うべきだ。電子顕微鏡をつかった米国の専門機関の調査システムも紹介されていたが、直ちに日本国内で同様の調査は難しい。
 一方、旧日本石綿協会(現在JATI協会)は、一定の資格登録・認証を受けたものであれば分離発注は必要ないという意見のようだ。自協会で資格を与えている石綿診断士を活用しようという魂胆が見え透いている。
 
 第3は大気濃度の測定の義務付け。検討会でほぼ合意が形成されているようにみえる。ただし、敷地境界かアスベスト除去工事中の徐じん装置の排出口とすべきかは議論のあるところ。また測定方法、評価方法については議論が詰めらていないが、この検討会で具体的な提案までは求められてはいない。
 環境省は「敷地協会10本/L」基準を維持するつもりか。それではあますぎで、もっと低いレベルにすべきとの意見が多くの委員からも出ている。

 第4は立入権限の強化。これは事前調査の対象となる建築物を対象にするのか、一定の要件に基づく届出対象のものにするのか整理が必要だ。おおむね地方自治体等の行政機関が必要に応じて立入できるよう権限を強化することには異論がなさそうだ。

 第5に周辺住民への情報開示と説明義務である。これまでの議論で論点として提起されていたにもかかわらず、完全に「中間報告骨子」からは脱落している。アスベスト飛散防止するためには、関係者のリスクコミュニケーションを促進させなければならない。
 アスベストが適正に処理されているのか、所有者、注文者、発注者、施工業者に情報開示と説明責任を求めたい。リスクコミュニケーションが信頼を醸成し、適正なアスベスト処理につながる。逆にいえば、リスクコミュニケーションをないがしろにすると不信感がうまれ、健康リスクをめぐるトラブルに発展してしまうのだ。

 今回の検討会を傍聴して感じたのは、議論は活発に行われているものの、委員のあいだでアスベスト飛散による健康リスクへに対する意識に不均衡がある。現場の融通性、技術的な利便性が優先され、アスベストによる健康リスクが過小評価されているのではないかと感じられる。

 あらためてクボタショックを防げなかった大防法の大気環境規制の失敗を総括すべきであろう。そして17年前の阪神淡路大震災、3・11東日本大震災がつきつけた大規模震災の破壊的な被害を忘れてはならない。
 今後、建築物の解体ラッシュが2028年の10万棟のピークに向け急増していく。
 アスベスト規制の歴史的総括と大規模地震の想定、建築物の解体状況の動向を見据えた大防法改正論議が問われている。
 

 



 
 



 
posted by toshc at 22:29| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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