2012年11月07日

愛媛からきた再審査請求人

 昨日午後、労働保険審査会の公開審理に代理人として出席した。再審査請求人は愛媛県のMさん(男性66歳)。早朝飛行機で上京した。東京にいる者には港区芝公園にある労働保険審査会は近いが、地方在住者にとって東京の審査会は限りなく遠い。さすがに近年はテレビ会議システムが導入され、請求人が地方労働局の会議室にいて東京の審査会とテレビ中継しながら審理できるようになった。ただしテレビ会議方式にもいろいろ問題点が指摘されている

 Mさんは東京の審査委員に直接、労基署の決定の不当性を訴えたいと考え、車イスで飛行機に搭乗し、羽田空港から杖をつきながら審査会に来たのだ。
 長年愛媛で労災職業病の相談をしていたHさんから電話があり、本人がどうしても東京の審査会に行きたいというので、代理人として付き添ってほしいと頼まれた。後日、事件資料も送られてきた。この日、審査会の7階の控室で初めてMさんにお会いし、一緒に審理に出席することにした。

 Mさんは用意したメモをみながら20分にわたり堂々と意見を述べた。熱弁だった。審査長は15分で終わらせろと言っていたが、彼の訴えをさえぎることはできなかった。
 Mさんは14年前に生死をさまようほどの大けがを負った。障害等級7級とされたが、その後症状が悪化し、様々な症状に苦しんだ。やっとの思いで専門医に出会い、1年半まって手術を受けた。難しい手術だったが成功し、労災の再発も認められた。彼の再審査請求は、苦労して再発が認められたのに移送費(通院費)が不支給処分にされたのは納得がいかないというものだった。

 審査委員の一人から、どのような経緯で遠方の病院に行くことになったのか質問された。Mさんは、いろんな病院にかかるうちに同じ病気の患者会と出会い、専門医を紹介されたのだった。そのことを汗をかきながら一生懸命説明した。審理は30分ほどで打ち切りとなった。実にあっけないものだ。控室に戻り、Mさんをねぎらう。言うべきことは言えたと満足げだった。
 Mさんは、その日の夜、新宿から出発する夜行バスで愛媛に帰った。Mさんお疲れさまでした。よい結果になることを願っております。



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2012年10月29日

敷地境界10本/Lはあますぎる−大気汚染防止法の改正論議

 10月24日(水)10:00から環境省会議室で、中央環境審議会大気環境部会の第6回目石綿飛散防止専門検討会が開催された。TOSHCから外山尚紀が委員に入り議論に加わっている。

20121024石綿飛散防止検討会.jpg

 今回、事務局の環境省から「中間報告骨子(構成案)」が示された。現時点(10/29)では環境省のホームページに当日配布された資料はアップされていない。
 この「中間報告骨子(構成案)」の項目立ては次のようになっている。

 T 検討の経緯
 U 総論
   1.石綿のリスクへの啓発普及
   2.所有者責任の明確化
 V 解体工事における石綿の飛散防止対策の強化
   1.事前調査の義務付け
   2.大気濃度測定の義務付け
   3.大気濃度測定にかかる評価基準及び測定方法
   4.立入権限の強化
   5.特定建築材料意外の石綿含有建材を除去するにあたっての石綿飛散防止対策
   6.その他

 検討会の議論で重要なポイントはいくつかある。
 第1は「所有者責任の明確化」だ。なぜか「中間報告骨子」の本文には「所有者責任の明確化」ではなく「注文者責任の明確化」と記載されていた。
 建築物の所有者といっても高層ビルを所有する企業もあれば、戸建て住宅の個人もいる。委員の中からは所有者にそこまで責任を負わせられるのかといった意見も出された。
 しかしたとえ建築物の種類、用途、規模にかかわらず、そこに含まれているアスベスト(石綿)の適正処理の責任を所有者に負わせることで応分の処理費用を負担させることができるのではないか。

 第2は、事前調査の義務付けだ。これについては大防法にないレベル3まで含める必要がある。また当然調査は発注者や施工業者と分離させ、登録又は認証制度のもとで専門の調査者が行うべきだ。電子顕微鏡をつかった米国の専門機関の調査システムも紹介されていたが、直ちに日本国内で同様の調査は難しい。
 一方、旧日本石綿協会(現在JATI協会)は、一定の資格登録・認証を受けたものであれば分離発注は必要ないという意見のようだ。自協会で資格を与えている石綿診断士を活用しようという魂胆が見え透いている。
 
 第3は大気濃度の測定の義務付け。検討会でほぼ合意が形成されているようにみえる。ただし、敷地境界かアスベスト除去工事中の徐じん装置の排出口とすべきかは議論のあるところ。また測定方法、評価方法については議論が詰めらていないが、この検討会で具体的な提案までは求められてはいない。
 環境省は「敷地協会10本/L」基準を維持するつもりか。それではあますぎで、もっと低いレベルにすべきとの意見が多くの委員からも出ている。

 第4は立入権限の強化。これは事前調査の対象となる建築物を対象にするのか、一定の要件に基づく届出対象のものにするのか整理が必要だ。おおむね地方自治体等の行政機関が必要に応じて立入できるよう権限を強化することには異論がなさそうだ。

 第5に周辺住民への情報開示と説明義務である。これまでの議論で論点として提起されていたにもかかわらず、完全に「中間報告骨子」からは脱落している。アスベスト飛散防止するためには、関係者のリスクコミュニケーションを促進させなければならない。
 アスベストが適正に処理されているのか、所有者、注文者、発注者、施工業者に情報開示と説明責任を求めたい。リスクコミュニケーションが信頼を醸成し、適正なアスベスト処理につながる。逆にいえば、リスクコミュニケーションをないがしろにすると不信感がうまれ、健康リスクをめぐるトラブルに発展してしまうのだ。

 今回の検討会を傍聴して感じたのは、議論は活発に行われているものの、委員のあいだでアスベスト飛散による健康リスクへに対する意識に不均衡がある。現場の融通性、技術的な利便性が優先され、アスベストによる健康リスクが過小評価されているのではないかと感じられる。

 あらためてクボタショックを防げなかった大防法の大気環境規制の失敗を総括すべきであろう。そして17年前の阪神淡路大震災、3・11東日本大震災がつきつけた大規模震災の破壊的な被害を忘れてはならない。
 今後、建築物の解体ラッシュが2028年の10万棟のピークに向け急増していく。
 アスベスト規制の歴史的総括と大規模地震の想定、建築物の解体状況の動向を見据えた大防法改正論議が問われている。
 

 



 
 



 
posted by toshc at 22:29| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

全国安全センターの新議長に平野敏夫(TOSHC代表理事)が就任

 10月27日〜28日、岡山市勤労者福祉センターで全国労働安全衛生センター連絡会議の第23回総会が開催された。TOSHCから平野、飯田、外山の3人が参加した。

 総会二日目、古谷杉郎事務局長より2012年度役員体制案が提起された。新議長にTOSHC代表理事の平野敏夫が選出された。全国安全センターの初代議長は故田尻宗昭さん(神奈川労災職業病センター所長)。田尻さん亡き後、故原田正純さん(熊本県労働安全衛生センター、熊本大学医学部助教授)、故井上浩先生(元労働基準監督官)、その後は天明佳臣さん(神奈川労災職業病センター所長)が長らく議長を務められたが、今総会をもって退任し、平野に引き継ぐこととなった。

 今年4月に設立されたおかやま労働安全衛生センターの皆さんの絶大なご尽力で、総会初日から110名の参加者が来場。

 松丸正弁護士(過労死弁護団全国連絡会議代表幹事)の記念講演「過労死裁判を通して見えてくる労働現場の課題」、片岡明彦さん(関西労働者安全センター)の特別報告「校正印刷労働者に端を発した胆管がん問題」を聞いた後、アスベストとメンタルヘルスの二つの分科会に分かれて活動報告と議論を行った。

20121027特別講演する松丸弁護士.jpg
 <講演する松丸正弁護士>

 二日目は、地元おかやま労働安全衛生センターの活動報告、津田俊秀さん(岡山大学医学部教授)の「放射線の健康影響と市民の知る権利」、奥津晋介弁護士の「岡山にけるアスベスト裁判の現状」の報告と問題提起が行われた。

 その後、振動病、韓国の労災、建築物の既存アスベスト除去問題、原子力関連労働者支援局の活動報告を受け、議案を討議。一括承認された。
 最後に平野敏夫議長が就任の挨拶を行い、閉会となった。、


 
posted by toshc at 20:06| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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